まずは名乗りましょう

どこなのかは、わからない。

まっすぐ歩く私の左右には、全身黒ずくめの人垣。

誰なのか顔を確認しようとも

靄がかかったように認識できない。

 

しばらく歩みを進めていくと

突如人垣の中に目を奪われる。

その人はただ一人、深紅の服装に身を包んでいた。

綺麗な赤。

黒色に慣れた目が、痛い。けれど、目が離せない。

 

だんだん近づき

その人の目の前を通り過ぎようとしたまさにその瞬間

「ほね、ひろえ!!」

 

そう怒鳴られた瞬間、私は目を覚ましました。

 

後日、久々に従妹から電話があり

従妹の母、つまり私の伯母が少し前に他界したことを知りました。

あの時、赤い服を着て骨を拾えと怒鳴ったのは伯母だったようです。

 

…という母が見た夢の話。

 

母曰く

「骨拾って欲しけりゃ名前ぐらい名乗れや!!!

顔もわからないんじゃ誰だかわかんねーだろがっ!」

 

お怒りでした。